■「僕にとっては人間」
ピロートークは間違いなく一方通行で終わっているはずだが、中島さんは真実の愛を見つけたと言う。「心が満たされているので、売春(婦相手)でも浮気は考えられない。さおりは本物の恋人、そして人生最後の恋人です。僕にとっては人間です」
出生率の低下が社会問題化している日本では、「草食系」と呼ばれる男性が増えている。恋愛や従来の男らしさの価値観に背を向け、競争しない穏やかな人生を望む男性だ。
人形や玩具があふれる家で一人暮らしするブロガーの兵頭喜貴さん(43)は、ドールとの関係を選ぶ男性はもっと増えていくだろうと語る。「女性よりストレスがないし、文句は言わないし」
兵頭さんは理解ある人間の女性と交際する一方、等身大のドールを10体以上所有している。軍事オタクの兵頭さんは、ドールに戦闘服を着せて、戦争ごっこをして遊ぶのだ。
以前は、そんなファンタジー世界の中でドールとセックスもしていたという。「今はドールとセックスしていない。体より頭の中の理性的なつながりの方が大きい」
兵頭さんがドールに引かれるようになったきっかけは、子どもの頃に街中で真っ黒に焦げたマネキンを見たことだという。
「一番分かりやすく言うと、スポーツカーのコレクションと思ってもらえるといい。いくらお金使っているか分からないが、ランボルギーニよりは安い」
将来的には同じ出費でより大きな刺激を得られるようになるかもしれない。会話ができて笑うことができて、オーガズムを感じた振りまでできる次世代のセックスロボットの開発が進んでいるからだ。
だが、冒頭の尾崎さんの妻、りほ(Riho)さんにとっては、夫の寝室から無言でりほさんをあざわらうドールの存在を振り払う日々がまだ続く。
「主婦の仕事をきちんとしている。ご飯の支度や掃除、洗濯も」と、りほさんはもう諦めたように言う。「セックスより寝る方を選ぶ」